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画像提供/森田典子さん

Lifestyle

【監修記事】「スマホいつから?」に悩むママへ。思春期の親子関係専門家が伝える見守りのヒント

「スマホっていつから持たせるべき?」「うちの子、最近オンラインゲームばっかり」そんな悩みはありませんか? 思春期の子育てで避けては通れない、子どもとデジタル機器との付き合い方。親はどう見守るべきなのでしょうか? 今回お話を伺ったのは、思春期の親子関係専門家の森田典子さん。ご自身も思春期の子どもを育てながら、たくさんのママたちの相談に耳を傾けてこられました。スマホとの付き合い方や親子でのルール作りなど、ヒントが満載のインタビューです。

思春期は、社会に出る前の大切な時期

森田典子さんプロフィール
思春期の親子関係専門家/「九州のママ集まれ!」副代表/合同会社co-e connect副代表
中高の教職免許(英語)をもつ元教師であり、JADP認定上級心理カウンセラー、ブレインアナリスト・プロの資格も保有。中学2年生の男の子、小学6年生の女の子の2児のママ

ーーまずは森田さんが思春期の親子関係専門家として活動されるまでの経緯をお願いします。

森田:元々は山口県で高校の英語教師をしていたのですが、結婚を機に大分県へ移住しました。大分に来てからは英語教師の資格を活かして幼児向けの英語教室を運営していました。幼い子どもたちと関わる中で、子どもへの声かけや接し方の重要性に気づいたんですよね。そして私自身ももっと「親子の未来」に関わる存在になっていきたいと思うようになり、コーチングや心理学を学びました。
その後、コロナ禍がきっかけで英語教室は閉めたのですが、そのタイミングで大分県のママコミュニティ「大分のママ集まれ!」とも出会ったのです。そこで多くのママたちと話す中で、乳幼児の子育て支援は多いものの、思春期の子どもを持つ親へのサポートは少ないと感じるようになりました。また、私自身の人生を振り返っても、思春期を前向きに過ごせたのは親の支えや親が与えてくれた環境のおかげだなと。
特に挫折をした時、子どもが次の道を選ぶ力の下支えをするのは親の力だと思うんです。社会に出る前の大切な時期である思春期の親子関係を充実させることが、その後の人生に大きく影響すると考えています。私の知識がママたちのプラスになればと思い、2020年頃から「思春期の親子関係専門家」の活動を始め、講演や相談会などを行っています。

デジタル機器により、コミュニケーションを学ぶ機会が奪われている

ーーでは、大事な思春期にデジタル機器が与える弊害や問題は?

森田:中学生だと約9割の子が自分のスマートフォンを持ち始めると言われていますよね。それによる問題は主に3つに分けられると思っています。
1つ目は、スマホでの友だち同士とのやり取りで起きた問題はなかなか表面化しにくいこと。親が見えないところでトラブルを起こしたり、巻き込まれたりが発生してしまいます。
2つ目は、どうしても使いすぎてしまうこと。これは思春期の脳がまだ発達段階だからこそ起こることなんです。理性や感情をコントロールする脳の部位「前頭前野」が未発達なので、SNSや動画コンテンツに没頭しやすく、依存に繋がりやすい傾向があります。
そして3つ目が、コミュニケーション能力や社会性、自己理解、共感性などが育ちにくくなること。本来これらは思春期の人間関係で培っていくはずの力です。時に失敗しながら学んでいくのですが、それが難しくなっています。

ーーなぜデジタル機器を使うことで、そういった能力が育ちにくくなるのでしょうか?

森田:デジタル機器でのコミュニケーションは一方通行になりがちで、相手の表情や感情の機微を読み取る機会が少なくなるからです。対面での会話だったら「今の言葉で、相手がちょっと難しい顔をしたから、嫌だったのかもしれない。この言葉のチョイスは控えよう」とか、自分の言葉で相手がどんな感情を抱くかを、無意識的に学べるんですよ。思春期は、そういった対人関係から自己理解を深める大切な時期なのです。
でもデジタル上のやり取りだけでは、それがなかなか難しいんですよね。そんなつもりじゃなくスマホで送った言葉が違うように受け取られてトラブルになったり。顔が見えない相手とのオンラインゲームで簡単に暴言を吐いてしまったり。

ーー人に対する想像力が欠如してしまうのではと、心配になります。

森田:そうですよね。例えばネット上でもよく見る「キモい」「ウザい」という言葉。使う側は相手を否定しているわけではないかもしれないけど、言われた側は少なからず嫌な思いをするわけで。それで傷つく経験も増えると、今度は傷つかないように自分の感情を動かさないようにしてしまうんです。感情を麻痺させてしまうんですよね。
だからなのか、感情が乏しく表現力が低い子どもも増えているんですよ。例えば映画を見ても「面白かった」以外の感想が出てこないとか。

ーーやはりデジタル機器は百害あって一利なしなのでしょうか?

森田:ただ、デジタル機器は使い方によっては非常に便利ですよね。例えば今日もオンライン通話を使用して、大分と東京という離れた距離で取材ができています。
正しく使えていれば、どんどん新たな可能性を広げてくれるツールではあります。重要なのは、デジタル機器に使われる側ではなく、使う側になることです。

些細な変化に気づけて、話し合いができる親子関係を

ーー森田さんも思春期のお子さんがいますが、デジタル機器の使い方はいかがですか?

森田:実は、息子が中学1年の夏頃、軽いスマホ依存傾向がありました。部屋にこもる頻度が増えて、私に対しても暴言を吐くようになって。私が何かを指摘することもすごく嫌がるようになって。ただの反抗期とは違うかも…と思い始めた時に、息子が体調を崩したんですよ。そこでやっぱりおかしいと思い、色々と原因を探ったらスマホの使いすぎでした。1日の平均稼働時間が10時間にもなっていて。学校に行っている時以外はほぼスマホを手に握っている状態。そこから改善が始まりました。

ーーそうだったのですね。その経験も踏まえて、デジタル機器を与える上で親が気をつけるべきこととは?

森田:まずは、 子どもの些細な変化に気づける親でいることです。私もそうでしたが、「何かおかしいな」と気づけるのは、やっぱり親なんですよ。子どものちょっとした変化に気づける日頃の見守りが大前提。
そして、話し合いができる風通しの良い親子関係を築くこと。話し合いをしなければ使用方法のルールも作れませんよね。それに正直に言うと、ルールはいずれ破られるものです。それがダメなのではなくて、ルールには改善が必要ということ。ルールが上手くいかなかった時に話し合いができる親子関係は絶対に必要です。
私も息子がスマホ依存症気味になった時、反抗期もあったとはいえ「使い方を見直してみようよ」と話し合いができる関係性があったことで、改善することができたのです。

ルールづくりは、子どもの心の成長の場

ーーデジタル機器のルールづくりについて。どんなルールにすれば良いのでしょうか?

森田:スマホであれタブレットであれ、月会費がかかっているものは親が払っているはずです。そういった状況である以上、それらのものは「親からの貸出品」という位置付けであることを子どもにまずは伝えてください。「あくまでママとパパのものだから、ママもパパもたまに中を見るよ」と。これは全てを監視・管理するという意味ではなくて、そういった第三者の目が子どもに理性を働かせやすくするからです。
そしてルールづくりは子どもと親の共同作業なので、親がルールを一方的に押し付けるのはNG。「使う時間」「使う場所」「用途」について親の気持ちと子どもの気持ちの中間点を見つけてください。そうすれば親も子も納得するルールができます。
ルールをつくることは、子どもが自分で考え、行動し、自制心や自律心、自主性を育むことにも繋がります。一緒にルールをつくり、それを破り、また改善して…という課程で子どもの心は育っているのです。そう思うと、「ルールを守ってくれない!」ということに必要以上に頭を抱えなくなりますよね。

「スマホが欲しい」は親子の仲が深まる会話のチャンス!

ーー「欲しい」や「もっと使いたい」など、子どもからデジタル機器に関する要望があると、頭ごなしに否定したくもなります。本来は肯定から入るべきなのでしょうか?

森田:「自分の思いを受け止めてもらえた」と思ってもらうために、子どもからの要求は基本的には肯定から入る方が良いと思っています。否定から入りたくなる気持ちもわかりますが。
例えば小学生のお子さんに「スマホが欲しい」と言われた場合、「まだ早い」と即答するのではなく、「どうして欲しいの?」と、まずは子どもの気持ちを汲み取ってみてください。そこから会話が生まれ、子どもの気持ちを引き出すきっかけや親の不安や懸念を伝える機会にもなります。
「みんなが持っているから欲しい」と言われたら、「クラスの中でどのくらいの子が持っているの?」「AちゃんとB君と…」と会話が続き、子どもが普段どんなことを考えているかがわかりますよね。
もしかしたら「LINEでつながっていないと友だちの輪に入れてもらえない」なんて悩みを抱えているかもしれない。こういうのも子どもの勘違いかもしれないし、「だったらママのLINEをお友だちに教えて良いよ」という解決策もありますよね。
デジタル機器をまだ与えたくない親と、持ちたい子ども。会話の中で妥協点を見つけるのが一番良いのではないかと思います。そのためにもまずは肯定から入れば、子どもも自分の気持ちがスムーズに言いやすくなるはず。「デジタル機器が欲しい」は、子どもとの会話のチャンスだと思ってください。
そういった会話の積み重ねが、親子の信頼関係にも繋がりますし、子どもが自分の気持ちをコントロールすることのトレーニングにもなるのではないでしょうか。

家の前に貼られて恥ずかしいことはSNSでは書かない

ーーずばり、スマートフォンを持たせるタイミングはいつが良いのでしょうか?

森田:難しいですよね。家庭環境や子どもの発達状況によって異なりますし、一概には言えません。
その上でタイミングを見極めるためには、「何のために使いたいのか」を子どもに聞いて、その必要性を確認することです。例えば「動画が見たい」だったら家のタブレットでできるよね? という話になりますし。
持たせるタイミングは各家庭の判断にはなるので、それよりも「持たせ方」の方が大切かなと思っていて。特にSNSアカウントの安易な開設には注意が必要だと思っています。

ーーSNSのアカウント開設はいつ頃からなら大丈夫なのでしょうか?

森田:目安として私がよく伝えているのは「家の前に貼られて恥ずかしいことはSNSに書かない」という話の意味が理解できるかということ。
家の前に自分のプライベートな情報やパスワード、写真を貼られたら嫌ですし、誰かの悪口だって家の前に堂々と書かないはず。家の前に書くことと、SNS上に書くことは同じなのだという概念がわかっていて、この情報は出して良いのか悪いのかという分別がつく状態であること。これがSNS開設許可のタイミングとして重要かなと思います。

ーーいざ子どもがSNSアカウントを開設して、トラブルに巻き込まれないために。親ができることはありますか?

森田:子どもが加害者にも被害者にもなり得るのがSNSです。実際にニュースでも日々SNSを使ったトラブルが報道されています。そういった事件があった際に、家庭内で話題にしてみることも良いですね。
あとは「何かちょっとでも不快なことがあれば必ずママに相談してね」と伝え、日頃から相談しやすい親子関係を作っておくことですね。
そして意外とやっておいた方が良いのが、近所でも学校でも、子どものことを知っているママ友と日頃から話せる関係性をつくっておくこと。表面化しづらい問題がママ友経由から入ってくることもありますよ。

脱デジタル依存のためには、興味があることを見つけて暇を作らないこと

ーー最後に、すでにデジタル依存症気味の子どもに対しての改善策を教えてください。

森田:子どもに暇を作らせないことです。デジタル機器を使い始めると、それ以上に魅力的なものを親が用意するのは現代ではほぼ無理だと思うんですよ。だからこそ暇を作らせない。暇があるとデジタル機器にハマってしまうので。
例えばちょっとしたお出かけでも良いんですよ。「スマホで写真を撮るためにフォトジェニックな場所に行ってみよう」とか。外で遊ぶのが好きだったら山や川などのレジャーに行ってみる、近所の図書館で新しい本を借りる、子どもが興味ありそうな展覧会や博物館に誘ってみるとか。子どもと一緒に楽しそうなイベントを探してみるのも良いですよね。
それも「本人が興味ある」ということが大切です。興味があることに時間を使えるよう、親がちょっと誘導してみてください。息子は、図書館で好きな本をたくさん借りてきた時はスマホを置いて集中して読んでいましたよ。

ーーー

デジタル機器との付き合い方に正解はありません。でも、親子でルールを話し合うことが、子どもの成長に繋がり、親子関係をより良いものにするとのこと。まずは子どもの気持ちに耳を傾けてみてくださいね。

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菱山恵巳子

ライター

1991年生まれのライター・コラムニスト。エンタメからビジネスまで、執筆ジャンルは多岐に渡る。恋愛漫画の原作も手掛ける。2016年に出産、男女の双子を育てる母。男性アイドルウォッチャー。
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